<これから観る人への感想・ネタバレなし>
第91回アカデミー賞作品賞
『グリーンブック』
ヤバい。今年1番、いやアカデミー賞受賞作の中でも抜群に面白いです。
最近観たい映画ないなって人がいたら、
『グリーンブック』と
『ボヘミアンラプソディ(をIMAXとか音響いいとこで)』
って言っとけばまず間違いないはず。
人種差別問題のテーマであるものの、重くないどころか軽やかに気持ちを上げていってくれる作風なので、以前近しいテーマでアカデミー賞をとった『それでも夜はあける』みたいなものは苦手という人でもオススメできるとっても良い作品。
鑑賞後感としては『最強のふたり』が近いものの、劇中の笑いが本作の方がコミカルで面白い。
笑いといってもいわゆる下品な笑いの取り方(効果音やオーバーな映像演出)ではなく、役者の表情や仕草から自然と湧くものなので、 静かな満席の映画館で客の笑い声が気持ちよく響くといういい感じの砕け方になっている。
二人がケンタッキーを食べるくだりなど、二人が打ち解けあっていく一つ一つのシーンが素敵すぎてヤバいのだけど、やっぱりラストシーンが最高です。
ドアが開いてからのあれは泣きます。
手前のレストランのくだりがあるから余計に。
トニー(白人の方)の妻(ドロレス)がまた最高。全部わかってたのね。それであのセリフ出るのね。っていう。奥様にも注目です。
エンドロールが涙で見えなくなるの久しぶりでした。
超オススメっす。
<公式サイト>
<予告>
<監督・キャスト>
監督:ピーター・ファレリー
主演:ヴィゴ・モーテンセン
助演:マハーシャラ・アリ(第91回アカデミー賞助演男優賞受賞)
<あらすじ>
人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の2人が旅を続けるなかで友情を深めていく姿を、実話をもとに描き、第91回アカデミー作品賞を受賞したドラマ。
1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒として働くトニー・リップは、粗野で無教養だが口が達者で、何かと周囲から頼りにされていた。
クラブが改装のため閉鎖になり、しばらくの間、無職になってしまったトニーは、南部でコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリーに運転手として雇われる。
黒人差別が色濃い南部へ、あえてツアーにでかけようとするドクター・シャーリーと、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに、その旅に同行することになったトニー。
出自も性格も全く異なる2人は、当初は衝突を繰り返すものの、次第に友情を築いていく。
トニー役に「イースタン・プロミス」のビゴ・モーテンセン、ドクター・シャーリー役に「ムーンライト」のマハーシャラ・アリ。トニー・リップ(本名トニー・バレロンガ)の実の息子であるニック・バレロンガが製作・脚本を手がけ、父とドクター・シャーリーの友情の物語を映画化した。
監督は、「メリーに首ったけ」などコメディ映画を得意としてきたファレリー兄弟の兄ピーター・ファレリー。アカデミー賞では全5部門でノミネートされ、作品賞のほか脚本賞、助演男優賞を受賞した。(映画.comから引用)
<ネタバレあり感想>
※注意※ネタバレあります。
※注意※この先ネタバレあります。
※注意※この先ネタバレありま~す!
最初の黒人二人の飲んだグラスをゴミ箱へ放り投げるトニー。
拾う妻。
ここからすでにフリになってたのね。
それほどまでに黒人を嫌っているというわかりやすいシーンでした。
トニー役のヴィゴ・モーテンセンは『ロードオブザリング』からだいぶ雰囲気違うというか、むしろなんだこの退化したおっさんに・・・と思いきや役作りとは。
素晴らしすぎる役者魂。役作りで14kg増量です!
シャーリーの登場シーン、あの部屋であの風貌であの冷たそうな表情はいい。
後から砕けて笑顔が見えてくるとギャップにグッとくる。
アカデミー賞助演男優賞を獲得した理由の一つにもあのギャップにやられた人も多いと思う(勝手な想像です)
※アラブの石油王みたいな風貌。
物語はわかりやすく面白い。
8週間ツアーの最初の拠点・ピッツバーグでの講演終了後のトニーの妻あての手紙が核心をついていて、
「あいつは天才だ…でも楽しそうじゃない」
という。
そして、大雨の「私は何者でもない」のシーンへと落とし込まれるのだが、
シャーリーの言葉を受けたトニーの表情がまたいい。
2人のシーンは名シーンが多い。
名シーン1
ラストシーンでしょうか。実は抱擁って最後のシーンだけだったのでは・・・?
と思えるくらいとても心地よい距離感になっていたと思う。
ツアーが終わり、温かな家族に迎えられる家に帰るトニーに対して、
執事だけがいる、豪華な飾りは多いが冷たい印象の部屋に帰るシャーリー。
「メリー・クリスマス」と言って、業務を切り上げさせるシャーリー。
執事もいなくなった部屋で、翡翠の石をおいてため息。
・・・からの!!
シャンパン持ってトニー家に登場!
なぜか、質屋の夫婦が先にピンポンを鳴らすというフェイント付き(笑)
笑顔で抱擁するだけでも感動。
シャーリーは“孤独”から自ら抜け出しトニーの家族のもとへ行くという選択をしトニーが温かく受け入れる。
この物語で二人の距離が圧倒的に縮まったことを深く、わかりやすく表したシーンでした。
シャーリーがトニー家に入り紹介したら、一瞬凍り付く家族たち。
前段の黒人お断りレストランと同じ空気・・・からの、
「彼(シャーリー)のお皿を用意しよう」で涙止まりません。
家族は受け入れた、いや受け入れていたのですね。
これも前段で
家族「あのニガーとの生活はどうだった?」
トニー「ニガーっていうんじゃねぇ」
とあのやり取りでフリきいてました。
そして、トニー妻との抱擁です。泣けます。
妻のセリフ、
「素敵な手紙をありがとう」
であの笑顔。涙ダムの崩壊です。
この妻がヤバい。すべてわかっていたんですね。
トニーが黒人を嫌いだけど、黒人に罪はない。差別など毛頭していない。
そして、トニーが嫌いだった黒人(シャーリー)の指導で、途中から抜群に良くなる手紙。
こんな優しくて家族思いな妻います?エンドロールで実際の写真も出てましたが、めちゃくちゃキレイな方でした。
最後のモーテルで書き上げ、切手代の節約のため直接渡すといったあの手紙の感想を最後観たかったな。
名シーン2
劇中にトニーが言った。
『この世は複雑だ』
そう、複雑だよね・・・
旅の途中で、NYクラブの友人に会い給料の良い仕事を振られるトニー。
給料がいいから今の仕事を受けていると聞いているシャーリーはじっとみていた。
そしてその夜友人に会いに行くトニーに、
シャーリー「給料を上げるからツアーを続けてくれ」
トニー「辞める気はない、大丈夫だ」
黒人批判の多いツアーエリアの中で、二人をつないでいるのは“お金”だと思っていたシャーリー。
そうじゃないんですよね。
じゃあなんで給料のいい友人の仕事に乗る気はなかったのか。
シャーリーへの愛情などもありそうですが、
それ以上に「依頼主のお願いを受けたからにはやりきる」というトニーの人柄というか信条にあったのだと思います・・・かっこよすぎだろトニー。
もうここで友情は成立していたんだと考察します。
名シーン3
ケンタッキーのくだりでしょう。面白すぎ(笑)
ケンタッキー州に入るやいなや、「フライドチキンだ」とトニーが叫びドライブイン。
二人が打ち解けあう重要なシーンではなかったでしょうか。
おそるおそるシャーリーはケンタッキーを食べ「うまい」の一言。
骨はどうすんだ?
トニー・・・窓からポーーーーイ(笑)
シャーリー・・・窓からポーーーーイ(笑)
笑いが生まれる二人
トニー・・・ドリンクも窓からポーーーーイ(笑)
シャーリー「拾えよ」
っていうコント付き(笑)
さらにその後のホテルでピザ一枚を丸ごと折りたたんで食べるというフードファイティングぶりも見せつけられます(笑)
まとめ
旅の中で二人はお互いを知り、少しずつ絆が深まっていくわけですが、
ドンの孤独は深く、計り知れない。
トニーに寡黙で言わないこともたくさん。
しかしトニーは「ちゃんと話せ、俺から離れるな」などしっかりとシャーリーを擁護していく。はじめは仕事でも最後には愛情になっている。
彼が初めて本音をぶちまけたあの大雨のシーンは胸が痛むが、
シャーリーがあそこまで言えたのもトニーの存在があってのこと。
黒人だらけの酒場でこだわり続けた“スタインウェイ”じゃないピアノでショパン。
(曲名は調べたところ『木枯らしのエチュード』らしい)
シャーリーの原点というかプライドを感じることのできる名シーン。
その後のセッションも最高。
気分が上がる上がる。
・・・からの結局銃は持っていたというオチがついてます(笑)
アカデミー助演男優賞を授賞したマハーシャラ・アリの劇中の仕草や振る舞い、存在感や演技はもちろん、ヴィゴ・モーテンセンもめちゃくちゃ良かった。
二人で一つの賞ってことでいいよ!!って感じ。
もう、とってもケンタッキー食べたいです。
骨投げしたいなぁ(笑)
最高の奥様でした
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