どうもこんにちは!
出版社に9年勤めるサラリーマン、ミギーです。
はい、というわけで今回は
出版不況の実態についてのブログです。
普段の生活の中で出版のニュースを聞くことはあまりないと思いますが、
書店の閉店、出版者の倒産、赤字決算など基本的にネガティブなニュースがここ20年くらいずっと続いています。実は。
『スマートフォンの影響で、書籍を読む人が減った』
『電子書籍の普及で、紙の本は読まない』
などなど周囲でも聞くことが多いと思いますが、
じゃあ、実態ってどうでしょう。
ちょっとした勉強のつもりで、ぜひ見てみてください!
出版業界規模=コンビニの2週間強の売上と同じ
リサーチ機関によって若干の誤差はありますが、
- おおよそ出版業界の規模は約1兆3,000億円。(2018年)
- 全国の出版社数は、登録で約3,000社。(2018年)
- 書店数は全国約11,000店舗。(2018年)
- 1年間に出てくる新刊の刊行点数は約80,000点弱
となっております。
まず業界規模1兆3,000億円ってどれくらいか。
例えばファミリーマートだと、全国店舗数が16,000店舗ほどなのですが、
コンビニ1店舗の1日売上ってだいたい50万円くらいと言われます。
すると、だいたい2週間+数日で1兆3,000億円を越えます。
わかりやすくざっくり言い切ってしまうと、
ファミリーマート2週間強の売上が、
出版業界全体の規模と同じ
なんですね。
このファミマ2週間強の売上を3,000社で取り合っていることになります。
3,000社の中には大手の講談社や小学館、文芸春秋などもあれば、
教科書を作る会社もあり、海洋生物のすべてみたいな専門書の会社もあります。
なお、出版業界規模のピークは1996年の約2兆6,000億円。(2017年 出版指標 年報)
20年で市場規模は50%以下に下落してます。
どう考えてもヤバいですよね。
そりゃ潰れるわ!という話です。
出版社の数3,000社っていうのも、体感ですがかなり怪しい。
まだ表になっていないだけで、相当数は潰れていると思います。
あと、これは推測なのですが、「出版」という業種って、
リクルートとかベネッセHDとかも入るんですよね。たしか。
だから、純粋に出版事業だけしている会社となるともっと少ないはずです。
書店数についてや売上についてはこちらの記事をぜひ参照してください。
スマートフォンの影響で、書籍を読む人が減った
読書の時間が“スマホで奪われている”とよく聞きますが、
そうゆう問題ではないと全国大学生活協同組合連合会という組織からの指摘もあります。
面白いのは、そもそも読書する人が10,000人アンケートを取って、
読書時間が0分(本を読まない人)は50%ほどなんです。
全国大学生活協同組合連合会 参照
そこから1日30分なのか、1分なのかという差はありますが、
逆に言うと読む人は10,000人の学生がいたら5,000人は見ていることになります。
これって結構多いはず。
若者の書籍離れとは言われますが、データ上は実はそうでもない。
ということは・・・
書籍離れしているのは実はおっさんたちなのかも?(という可能性もあり)
よくよく考えれば、人口ピラミッド的にも20代と60代で、
人口は1.5倍~2倍くらい(おおよそ1年代で50万人くらいは)違います。
平成25年統計局ホームページ/日本の統計参照
そもそも書籍って、
学びを得るためのもの
という位置づけのイメージが付いています。
学校で学ぶために使用したツールは書籍であり(最近は少し違うようですが)
聖書をはじめ、ものの教えを説くものもおおよそ書籍です。
特に学生は比較的書籍に触れる機会も多いはず。
だから、スマホが奪ったは少し違うように感じます。
一方、ここのデータで見えない部分で言ってしまうと、
スマホが出版業界の売上を大きく減らす要因となっているものがあります。
電子書籍の普及で、紙の本は読まない?
この電子書籍に奪われた。はかなり親和性が高いです。特に雑誌において。
まず電子書籍市場について触れておきますと、
これもリサーチ機関によって若干誤差があるのですが、
2013年には400億円程度だった市場は、
2018年では3,000億円以上にはなっています。
3,000億円の中身を紐解くと80%以上はコミックです。
めちゃコミックなど定額制でマンガが読み放題などのアプリのCMを見たことある方は多いと思いますが、伸びに伸びまくっている業界です。
テキストベースの実用書売上はそこそこですが、こちらも伸びていることに変わりはありません。
毎年のように『電子書籍元年』などと言われ続けてきましたが、もはや馴染んでいる感じまでありますね。
さて、話を戻してなぜ書籍の市場低下に電子書籍が影響しているのかお話しますね。
先ほど、1兆3,000億円ほどとお伝えした出版業界の売上ですが、
内訳をお伝えすると、
実用書などの書籍:7,000億円ほど
雑誌:7,000億円未満
とざっくりこんな感じです。
そして以前は雑誌の売上は1兆円以上ありました。
縮小しているのは、雑誌業界なんですね。
じゃあ、なぜ縮小したのか。
犯人はこちらも定額電子雑誌読み放題サービスアプリ、Dマガジンや楽天マガジンです。
例えばDマガジンは月額400円で200以上の雑誌が読み放題!
契約数363万(※データ提供元「NTTドコモ」※2017年3月時点)以上あります。
一方、いかにも雑誌らしいスクープを出しまくる
週刊文春、定価460円です。
Dマガジンなら400円で週刊文春、FridayもSPAも見れます。
女性誌ならCancamやVIVI、GINGERやMAQUEAなどすべて読み放題。
どっち使いますか?
コスパ的には絶対Dマガジンなんです。どう考えても(笑)
ここだけの話、私の奥さんは雑誌編集者ですがDマガジンで済ませてます。
(でも書店にいくと紙の雑誌も買います)
よく、まだ7,000億円弱も市場規模残ってるな、と逆に関心します。
なお、最も売れている週刊誌『週刊少年ジャンプ』も、
2017年1~3月の発行部数平均は190万部ほど。
最高部数が1995年の653万部なので、3分の1以下になっているんですね。
私はコンビニの雑誌コーナーはあと数年でなくなるかかなり縮小されると考えています。
コンビニの雑誌はいわゆる“客寄せパンダ”。
週ごとに入れ替わり、かつ返品できるので在庫リスクがない。
売れれば収益、売れなくても立ち読みしてジュースの1本でも買って帰ってくれれば御の字なのです。
しかし雑誌の売上が落ちて、客寄せ効果は低くなった。
更に不況の影響に物流業界の人材不足などもあり、毎週雑誌を届ける配送もかなりの経営圧迫要因になっています。
コンビニのスペースは今や取り合いです。
売上にならない、客寄せにもならない。私がコンビニ店長であれば辞めます。残念ながら。
結論は、電子書籍の普及によって、紙の売り上げは下がっているが、雑誌が筆頭です。
このままいくと、紙の実用書も道連れに下がっていく可能性は高い。
今、『出版業』として利益が出ている企業は、書籍コンテンツ活用をうまくマネタイズしているところや本業ではない不動産事業(小学館などまさにそう)での収益が出版事業を補っている格好です。
沈みゆく船に乗っている出版社は多い印象。
就活で結構人気ジャンルに入る出版社ですが、よくよく将来を考えて入るべきです。
新しい書籍の売り方
本は読まなくなったのではなく、
読み方が変わった。また、購入までの経路(経緯)が大きく変化した。
ということになります。
新しい売り方で書籍の可能性を切りひらいている編集者や著者もいます。
箕輪厚介さんや西野亮廣さんですね。
書店ではなくコミュニティで売る、不特定多数ではなく熱狂ファン数十人に売る、
分担制にして一緒につくる、などなどアイデア次第でまた変わっていきそうな業界です。
箕輪厚介さんの新しい著書、『実験思考』は先進的でとても面白いです。
書籍は原価で売って、価値があると思ったらその分をQRコードの先へ課金。
今まで聞いたことない取り組みです。
価格は390円。普通はありえません。
書店の取り分は定価の約20%ですから、1冊売れても78円・・・
1,500円のニューズピックスブックが1冊売れれば300円の収益ですから3倍以上違います。
(取次や書店さんにはどのように還元するのだろうか。)
現場はめちゃくちゃ大変なはずです。
ちなみに「原価390円で売っている」という話ですが、
実は結構したたかな計算がなされているはずです。
出版社の利益の観点で考えると、
初版と重版では収益性が違います。
初版に掛かる原価
著者への原稿料
ライター起用・写真撮影
校正・校閲・DTP等、編集作業もろもろ
カバーデザイン・帯デザイン
印刷・流通・管理
などなど
重版にかかる原価
印刷・流通・管理
(あとは重版時に帯変更程度)
初版でも重版でも販売される値段は同じ390円です。
当然重版の方が著者もハッピー、出版社もハッピーなんですが、
ここのどの程度売れるかの設計・戦略もどうなっているのか、
とても気になります。
そして何より、そもそもこの著作が売れるのか?
また、QRコードでの課金がどの程度集まるのか?
出版不況という状況下での動き、ぜひ注視してみてください。
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