【ネタバレ感想&考察】パラサイト半地下の家族の結末は?韓国の格差社会をブラックユーモアを交えて描いた傑作

S級映画

はいどうもこんにちは、ミギーです!
今回紹介する映画は【パラサイト 半地下の家族】

「パラサイト」の画像検索結果
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

アカデミー賞で最高の賞である”作品賞”を外国語で初受賞!

第92回アカデミー賞作品賞(最高賞)受賞作品です!

外国語映画(全編韓国語)で初、アジアで初、当然韓国映画としても初。
92回目のアカデミー賞で風穴が空きました!!!
更に、脚本賞、監督賞、国際長編映画賞(旧:外国語映画賞)の

4冠達成!(第92回アカデミー賞で最多)

ポン・ジュノ監督、ヤバいです。韓国映画スゴイです。
アカデミー賞受賞の考察はこちら!

本作ですが、先に言っておきますと

『めちゃくちゃ面白い』

です!個人的にはかなり楽しめました。ポン・ジュノ監督は様々な作品がある中で一番好きなのは『母なる証明』。仄暗い霧に包まれるような”どんより感”と背筋の凍る”戦慄感”が特徴です。『グエムル~漢江の怪物~』『殺人の追憶』なども良作ですよ。

母なる証明ほか、ポンジュノ作品はAmazonプライムビデオで見放題です!
月額500円なのでレンタルのつもりでぜひどうぞ!

ただこの作品・・・デートには不向きです。

話題作ですが、デートで良い雰囲気づくりを手伝う映画ではないのでご留意ください!友人や家族ならOK!観る人は少し選ぶ作品でございます。
早速レビューいってみます!・・・が!!!

要注意

今回の作品は監督からネタバレすることなく多くの人に観てほしいというメッセージがありました。たしかに、ネタバレしては本作の面白さ(特にサプライズ感)が削がれます。しかし公開後には監督のネタバレありの撮影秘話やストーリーの裏側が語られていますので、本ブログでは内容完全ネタバレの上で考察まで進行します。ご注意ください!

「パラサイト」の画像検索結果
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

ネタバレ~結局何が面白いのか?3つのポイント~

非常に高評価を受けている本作ですが、何が面白いのかというと

「韓国内の格差社会を描き」ながら、

「ブラックユーモアを交え」、

「観ている私たちに当事者意識を持たせてくれること」

にあります。

3つのポイントに繋がるキーパーソンは第三の”完全地下”家族です。(ここがネタバレ厳禁のポイント)
タイトルですでに伏線なのですが、『半地下の家族』が『上流の家族』に寄生(パラサイト)する物語・・・の後半に『完全地下の家族』が出てきます。

そもそも半地下とは?

「パラサイト半地下の家族」の画像検索結果
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

映画は半地下家族の住居からスタートします。その名の通り、家の半分が地上に出ているお家で、韓国の貧困層を表す言葉です。日本だとあまり(というかほぼ)見かけないので珍しいですよね。

これは韓国の歴史が作り上げた住居で、1950年の朝鮮戦争後に「各家に防空壕をつくれ」という指導があり、地下や半地下付きの物件が急増。(水圧が低いためトイレが高い位置にあります。)

しかしその後戦争はなく、韓国が経済発展をする中でソウルに集まる人の住居需要に供給が追いつかず、所得の低い層の人々が防空壕代わりだった半地下に住みはじめそれが現在にも至ります。メイキングで美術監督が、わざと生ごみを散らし、ハエや虫が湧いている演出を本当に設定し撮影に臨んでいます。半地下独特の”陰湿感”と”臭さ”がスクリーン越しに伝わってきます。

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

ネタバレストーリー~完全地下家族の登場まで~

登場人物は大きく3つの家族です。

上流家族=パク社長の4人家族
半地下の家族=キム一家の4人家族
完全地下の家族=ムングァン夫婦←ここがネタバレ厳禁のポイント

まずは長男&長女がパラサイト

前半は、半地下で暮らす全員失業中のキム一家が、上流家族の家庭教師×2(兄弟)、家政婦(母)、運転手(父)として雇われるまで描かれます。

まずはキム家の長男ギウが、友人ミニョクの紹介でIT社長のパク家の娘の家庭教師として雇われます。その後、美術の家庭教師も必要ということでキム家の妹ギジョンも美術の家庭教師として雇われます。

その後、父と母がパラサイト

パク一家には元々、運転手と家政婦がいました。運転手はギジョンがパンツを車の中に落として運転手に疑念を被せ、うまく工作して辞めさせます。そして、父ギテクを(父ではなくいい運転手がいると言って)紹介。テストに合格して運転手になります。
家政婦・ムングァンは桃アレルギーでした。半地下家族たちは桃のうぶ毛を家政婦に浴びせ、パク社長に感染病の疑いがあると密告。突然苦しんで咳をする家政婦を雇っていては危険と判断させ、4年勤めていた家政婦を辞めさせます。そこに母チュンスクが登場、家政婦として採用されます。

4人は全員他人として自分たちの収入を増やすべくパク社長家に潜り込む(パラサイト)することに成功します。

完全地下の男、登場

上流家族全員が外出したある日、半地下の家族4人が豪邸で飲み会を開催。すると、辞めさせたはずの元家政婦がスゴイ剣幕で登場。忘れ物があると家に入ってくると豪邸の地下室の隠れ扉から更に地下へ続く道が登場。完全な地下には元家政婦とその旦那がいました。元家政婦は、ずっと上流家族に雇われながら地下にいる夫を4年以上も食べさせていたのです。

このおばさんが元家政婦
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

パラサイト半地下家族の結末

上流家族は雇っている4人が半地下家族とは知りません。完全地下の元家政婦は、半地下家族の秘密を握りますが反撃に会い、結果完全地下の妻は死んでしまいます。妻を失った完全地下の旦那はとあるきっかけで地下を出るとパーティーを開いている上流+半地下家族の前に現れ、包丁で刺していきます。結果、半地下家族の妹が亡くなり、母の反撃で完全地下の旦那も亡くなります。そして、半地下家族の父が、上流家族の父を刺します。(上流家族父の生死は不明)そして半地下家族の父は、完全地下に身を隠し生活していきます。一連の事件は終わり、上流家族は別の土地へ引越。半地下家族は4人→3人になり、残った息子が「金持ちになって、地下にいる父を救うために豪邸を買う」と決意します。完全地下の家族はどちらも亡くなります。

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

以上が大枠のストーリーですが、この概要だけ見ても「何が面白いのか」わからないと思います。(笑)というわけでここから考察です。

考察①韓国内の格差社会の描き方

受験に落ち続ける兄弟

半地下の家族の長男ギウと長女ギジョンは何度も大学受験に落ち続けています。二人とも能力に申し分はありません。しかし、お金はなく予備校にも行けず、就職もできず燻っています。韓国では、フリーターや浪人生も含めた「青年拡張失業率」(=15~29歳の実質的な失業率)は20%を超えており、5人に1人が実質的な失業者という状態が続いています。日本では20代の失業率は2019年6月で3.6%なので、その圧倒的な失業率が目に留まります。

「パラサイト半地下の家族」の画像検索結果
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

大学に入れば将来を保証されるわけではないものの、受験競争から脱落した時点で大企業への就職は望めなくなるのがいまの韓国です。日本では中小企業へ就職しても十分な給料がもらえますが、韓国は大企業と中小企業の扱いが二極化しており、サムスンのような有名大企業なら年収1,000万円、中小企業では労働条件も悪く年収300万円ほどと非常に格差があります。韓国内の企業は約360万社あり、うち大手は4,000社もないという狭き門。そのため大学に行ったからといって就職できるわけでもないが、若者は公務員や大企業に就職するために大学受験に固執することになり、普通に優秀で技術もあるこの兄弟もそこから抜け出せずにいます。

計画しない父親

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

劇中で大雨により半地下の自宅は浸水。体育館に逃げ込み今後どうするのか計画があると告げる父親。「失敗しないのは計画しないこと」と結論づけます。計画を立てるからうまく行かないとなる。元々計画がなければ、失敗などないという理論です。

韓国では若者と老人の間にいる”中間層”の不遇も社会問題です。『エクストリーム・ジョブ』でも触れていますが、韓国では定年退職後の進路がなかったり、いわゆる”おじさん達”は給料も低く、また給料がなかなか上がりません。例えば40代のコンビニ店長でも月収は25万円(年収300万円)ほど。働くこともままならないため、退職後に自分でチキン屋を起業する人が多いのです。

劇中の父ギテクも運転技術はあり、母チュンスクも料理も掃除もできます。十分な能力があるのです。しかし、韓国という環境が二人を半地下に住まわせています。
計画を立てたり、長く企業に尽くしても良いことはない。という諦めを表現するかのような父親の言動や行動が現在の韓国を投影していると言えます。

考察②ブラックユーモア&小ネタメタファー

格差社会を風刺していると言われている本作ですが、ユーモアがたっぷりです。シリアスなシーンも多くある一方でコメディ要素も外せません。

チープな嘘にハラハラドキドキ

長男ギウはソウル大学(日本でいう東大)、長女ミニョクはアメリカイリノイ州の大学(日本でいう東京学芸大学とか?)、運転手はこの道20年など、「いや絶対嘘だろ、バレるだろ!」という嘘が綱渡りのように成立していきます。(笑)

「パラサイト半地下の家族」の画像検索結果
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

めちゃくちゃ騙されやすい富裕層で家庭教師として長男が潜り込み、テストに合格し更にパク社長の娘ダヘとあっさりキスして出来てしまいます。それで将来は結婚して豪邸が手に入るとか、結婚式に両親は代理出席させようとか妄想が広がって真剣になっている姿が子供っぽく可愛いところです。嘘に嘘を塗り固めていくのですが、クライマックスまでバレずに進み切るというストーリー進行がスゴいです。

「パラサイト半地下の家族」の画像検索結果
この子(チョン・ジソ)ちょっと可愛かった。
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

かくれんぼにハラハラドキドキ

上流家族4人が出かけ、大学生が宅飲みするかのような酒とつまみを豪邸でかっ食らい、散らかし放題な姿の”画的なアンバランス感”が笑えます。結局貧困層の行動や満足な贅沢と言うのは住むところを変えようとも変わらないというメッセージでもあり、あまりの無防備感に鑑賞側はドキドキしかありません。映画を観ながら「絶対パク社長たち戻ってくるだろ感」がプンプンするのです(笑)案の定、上流家族が突然帰宅し慌てふためく半地下家族。なんと家のリビングテーブルの下に家族3人(母だけ家政婦として普通に家を出た)隠れます。そのリビングのソファでいちゃいちゃし始める上流家族夫婦・・・一種のコメディです。なんとその後見事に逃げ出し、4人家族は半地下自宅へ向かいます。(その後水没)

子供の画に写っているのは・・・

「パラサイト 解説 絵」の画像検索結果
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

間違いなく、完全地下の住人(旦那のほう)ですね(笑)
イイ感じのユーモアで笑いました。

インディアン姿の意味

インディアン=侵略される者の象徴としてとらえるとわかりやすいです。
上流家族のパク社長の息子がインディアン姿だったのは、これから半地下家族に侵略されるという意味。またラストに半地下の父がインディアン姿だったのも、”踏み込まれたくない領域”(=臭いなどの匂いの指摘)に侵略されたという意味にも取れます。このインディアン姿も考えると面白いです。

チャパグリ

「チャパグリ」の画像検索結果
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

色合いは茶色ですが、地味に美味しそうに見えるチャパグリ。何かというと韓国ではスタンダードなインスタントラーメンです。 「チャパゲティ」&「ノグリ」(半地下&完全地下家族)+「韓牛」(上流家族) の組み合わせの比喩ですね。

にしても、美味しそうでした(笑)Amazonで売ってます!

【韓国ラーメン】PARASITE【大HIT!!】チャパグリ (チャパゲティ+ノグリラーメン) 5+5 【韓国食品】 ★楽天最安値挑戦★ パラサイト CHAPAGURI
created by Rinker

性とラブシーン

ユン運転手の話をするパク社長夫婦
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

性については上流、半地下など関係ないと描かれています。
上流家庭=ソファでのラブシーン
半地下家族=半地下長男と上流娘のキスシーン
完全地下家族=コンドー〇の映るシーン

どのような家庭であっても営みがあり、そこに差はないことが描かれています。
思えば、車の中の”安っぽいパンティー”の方が興奮すると言ったパク社長もセリフにもいろいろ含まれている気がするのが、なんだか監督のユーモアと言うかセンスがあると思います。

北朝鮮アナウンサー

完全地下の妻が半地下の家族の弱みを握って制圧した時、旦那に馬乗りして北朝鮮アナウンサーのモノマネをするのですが、これがまたシュール。
お笑い芸人・中川家(弟)もビックリの北朝鮮風語り口調はかなり面白いです。アカデミー賞受賞で世界的に有名になったけど国際問題には・・・ならないか(笑)
そもそも、完全地下のお部屋は北朝鮮が発射するミサイルに備えて豪邸内にこっそり作られたシェルターですから、これも小さな伏線になっています。

階段と坂道

劇中はIT社長パク一家は基本的に階段を上るシーンです。一方半地下キム一家は、下層から上層へ上がる時、または上層から下層へ戻る時の象徴として映し出されます。

「パラサイト 登場人物」の画像検索結果
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

考察③当事者意識

本当の貧困層は・・・

映画の触れ込みは上流家族に寄生(パラサイト)する、半地下家族ですが、本当は半地下家族VS完全地下家族です。これは多くの中間層であり、現在の韓国の一般家庭を刺しているのだと思いました。決して富裕層ではないが、ホームレスと言うことでもない。下には下がいるという事実と、下の人間が踏み込んでくることに不寛容なのであるという深層心理を見せられた気がします。雲の上は見ているけれど、決してそこにいくことは出来ず、自分より下を突き落としていくため、格差が埋まることがない。これは日本に住んでいる私たちも同じなのかもしれません。パク社長の画は、階段を上るシーンしか映りません。逆にキム家は降りるシーンが多い。これもサブリミナル的に上流層と貧民層を分けているものと考えられます。

住んでみたい・・・
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

まとめ

傾向としては『ジョーカー』や『万引き家族』に近い印象を受けました。ジョーカーは社会から排除されてしまった一人の男がジョーカーになるまでを描いていますが、本作では完全地下の男が自分の生活を侵されてしまったことで、殺人鬼に変貌してしまうことを描いている一面もあります。

そして、半地下のお父さんが、上流家族のお父さんを刺してしまった理由は、「臭い」を言われただけではなく、一線を越えないとレッテルを貼られたと思った自分を壊したくてやったことなのかなと感じます。

本当は、水石についてや、モールス信号についてなどいろいろ話したいのですが、ブログがまとまりません(笑)

ブログを書くためにいろいろ検索する中で、韓国在住でパラサイトをめちゃくちゃ深く考察しているサイトに出会いましたので、こちらで紹介します。

『パラサイト 半地下の家族』ネタバレ解説 総まとめ!メタファー・伏線13個を徹底考察~ | アンニョンシネマ
あの石の意味は?韓国メディア、特に監督インタビューを参考に映画『パラサイト 半地下の家族』のメタファーについて、ネタバレ解説、考察しています。水石、インディアン、ダソンの絵、モールス信号などなど。これを知ったら、さらにおもしろくなりますよ!

映画ブロガー仲間のペペさんの考察も面白いです!

『パラサイト 半地下の家族』息子ギウが父ギテクに敬語を使う理由は?ネタバレ感想 | 無料で映画を観るならペペシネマ
映画を観て「何で息子ギウは、父親ギテクに敬語を使っているの?」「台湾カステラ?」と疑問に思いませんでしたか?これには韓国の社会的背景が隠されているんです。本記事ではパラサイトを観て感じた疑問を解説しています。100%理解したい方は必見です。

一旦ここまでをネタバレ&考察にさせていただきます!半レビューのミギーでした。
最後までご覧いただきありがとうございました!次のレビューもまた観て下さいね。

コメント

  1. […] 映画雑記 Twitter Facebook はてブ Pocket LINE コピー […]

  2. 柴田知美 より:

    大変興味深く読ませていただきました。私もパラサイトはまるで純文学の本を読んでいるようでした。皆さんも色々な考察をされていてすごいなと思います。ダソンが描いた絵が地下の旦那さんで家族の絵の横にかかっていることも読まなければ気がつきませんでした。他にも奥様がダヘをちゃんと愛しているのかとかギテクがキジョンを愛していたのかとかも思うところで家族愛自体にも少し疑問を感じたりしました。ポンジュノ監督の優しい怖さですよね。

  3. […] 正直、作風は好き嫌いがあると思います。 同じ年にアジア勢初の米国アカデミー賞を受賞した『パラサイト』はブラックユーモアを交えたよくできた作品でしたが、日本のメディアや権力問題に、真正面から向き合うように作ったイメージのため、重厚感があります。 […]

  4. […] 正直、作風は好き嫌いがあると思います。 同じ年にアジア勢初の米国アカデミー賞を受賞した『パラサイト』はブラックユーモアを交えたよくできた作品でしたが、日本のメディアや権力問題に、真正面から向き合うように作ったイメージのため、重厚感があります。 […]

タイトルとURLをコピーしました