<監督・キャスト>
監督:呉美保(オ・ミポ)
<解説>
咲乃月音原作の小説「さくら色 オカンの嫁入り」(宝島社文庫)を、 宮崎あおい&大竹しのぶのダブル主演で映画化。
陽子(大竹)と月子(宮崎)は母一人子一人で大阪の下町で暮らしていた。
ある晩遅く、陽子は若い金髪の男を連れて帰宅し「この人と結婚することにしたから」と言い放つ。
いきなりのことに困惑し、怒る月子は、隣に住む大家のところに居候することにするが、やがて陽子の事情を知り……。
<これから観る方への感想・ネタバレなし>
本作はTwitterでせっきーさん(@wowmam_boogie)にご紹介いただいた映画です。
ヒアリングの上で、オススメの映画を教えてもらえるという企画で、
以下のアンケートにお答え頂きDMを下されば、オススメの1本をチョイスします!
①あなたの最近の悩みは?
②今後どうなりたいですか?
③あなたの人生映画ベスト3は?
秘密は厳守致しますのでご安心ください。ご依頼お待ちしております!
再掲
— セッキー(元映写技師) (@wowmam_boogie) 2019年3月11日
ヒアリング事項は3点。
- 今の悩み
=単身赴任で妻とは別居中。転職に悩み
- 今後どうなりたいか
=普通の家庭を築きながら、映画をのんびり観て生活したい
- 人生の映画ベスト3
アバウトタイム
八日目の蝉
ジョゼと虎と魚たち
上記で回答したところ、
『オカンの嫁入り』をオススメいただきました。
以下、紹介文です。
“アンケート拝読いたしました。
ご家族と離れ離れでお辛いですね、大切な家族と一緒にいることが、何よりの幸せだと私自身も実感していたところなので、お気持ちお察しします。
ですが転職が上手く行くか、また環境を変えることに不安はありますよね。
なかなか一歩を踏み出す勇気が持てないのは当然かと思います。
そこでオススメしたいのは呉美保監督の「オカンの嫁入り」という母と娘の絆を描いた作品です。
大竹しのぶ扮する中年の母親と、宮崎あおい扮する20代前半の娘は、二人で古風な長屋に住んでいます。
旦那はずっと前に亡くなっており、二人だけの家族ですが、同じ長屋に住む大家のおばさんや、オカンが看護師として勤めている整形外科の院長がちょくちょく遊びに来ては、仲良くみんなで食卓を囲んだりして、まるで四人家族みたいなんですね。
それで娘は先生とオカンがくっついて本当の家族にならないかなと内心思っているんです。
そんなある日、オカンが「この人と結婚する!」と言ってまだ30代の年下の男を連れてきます。
娘はギョッとします。それはなぜかというと、見た目が金髪のリーゼントで田舎のヤンキーにしか見えないんですね。
娘は当然結婚に反対し、説得をしてもらうために先生を家に招きます。
話を聞くと二人は3年前に医院で知り合い、ずっとみんなに隠れて交際していたとのこと。
リーゼントの男は見た目に反して礼儀正しく真面目な男で、真剣に結婚を考えているらしいんですね。
また元板前で料理もとても上手で家事もこなせる、まさに理想的な男。
オカンは今日から彼もここに住まわせると言い出します。
当然、納得できない娘は激昂し家をでて、大家のおばさんの家に居候をすることになります。
そんな娘ですが、仕事をしておらず、ずっと家にいるんですね。娘は1年前に、勤め先の上司にしつこくストーキングされたことにより心に傷を負い、働けない状態になっていたことが分かります。恐怖で電車に乗ることもできず、社会復帰がなかなかできないんですね。
そんな娘をオカン達は優しく見守っていました。
でもなぜこのタイミングでオカンが平穏を乱すような真似をしたかというと、実はオカンにもある秘密があったんですね…
娘とオカンは家族の絆で困難に立ち向かいます。
一歩踏み出す勇気を与えてくれる映画でした。是非見ていただければ幸いです。
・・・(いい意味で)長いです。
会ったこともない私にここまで書いてもらえたのだと思うと、もう・・・
すぐ観ました(笑)
感想としては、とても好きな作風で、
さすが映画好き!
と感じました。
おそらく、私の好きな映画3作は観ている上での1本だったと思います。
全体的な映画の雰囲気は『ジョゼと虎と魚たち』(ジョセ虎)にとても近い。
ジョセ虎の日本映画っぽい雰囲気が好きで、特に“食べ物を映すシーン”がとても印象的です。
めちゃくちゃ美味そうに見えます(笑)
本作でも、美味しそうなご飯の数々と、何度か出てくる食卓のシーンで、家族のその時の状況を映していて、好きな雰囲気の映画でした。
ストーリーとしては、『アバウトタイム』の趣旨に近い印象。
アバウトタイムはタイムリープという手法を使って、家族が一緒に過ごすことの尊さを伝えていますが、本作でも“家族で過ごすことの意味・価値”というものが伝わってきます。
『八日目の蝉』は主人公の希和子(永作博美)が、
浮気相手の本妻が産んだ赤ちゃんを誘拐し、
その子(井上真央)が成長した後のストーリーを描いている作品です。
この映画の鑑賞後に感じるものはおそらく人それぞれなのですが、私の持っている感想は、
「人は血のつながりだけで親子なのではない、愛情が通い合って初めて親子なのだ」というものです。
本作においても、大竹しのぶと宮崎あおいの一家に、婚約者として桐谷健太がやってきます。
過ごした時間だけではなく、心が通い合っていくシーンが蝉の印象とも似ていました。
おそらく、好きな映画3本が違っていれば、また違う作品を紹介されたのではないかと推察します。
というか、そもそもよくある
【おすすめの1本】ってめちゃくちゃ難しいんですよね。
私の周りでは、映画好きが浸透しているのでたまに「いい映画ない?」的なことを聞かれているのですが、
本気でオススメしようとすると、マジで細かなディティールまで聞かないと、選べないんです。
『楽しくなる映画が観たい』と一言言われても、
グレイテスト・ショーマンみたいなミュージカルかな?
宮藤官九郎監督のコメディかな?
スティングみたいな名作かな?
ドラえもんみたいなアニメかな?
なんて、まったく絞り込めないんです
ミュージカルがいいな、と仮に言われても、
・クレイテスト・ショーマン
・ヘアスプレー
・バーレスク
・メリーポピンズリターンズ
などなど、そっから更にバリエーションがあるのです。
1本まで絞り込むには様々な推察要素がいるのですね。
これは裏を返すと、
『その人の映画のDVD、あるいはお気に入りを見ればその人の趣向がわかる』
ということでもあります。(笑)
本棚とかと似ているように思います。
それだけ、人へのおすすめ映画って考える。(こともあります)
もう一つの懸念としては“すでに観ている”パターンもありますし。(笑)
私は本作をはじめて観ました。
というか観ようと思っていて忘れていました。
なので、本作に出会えてよかった。
せっきーさん、ありがとう!
<ネタバレ感想>
※この後下にはネタバレ感想注意※
おおよそはあらすじで書かれていますので、
だいぶ端折ってしまいますね。
最後大竹しのぶは余命宣告されます。
がんが全身に転移していて手遅れと。
でも、婚約者を連れてきたときは誰にも知らせていません。
余命を理由に、婚約を受け入れてほしいと思わなかったから。
劇中に何度も衝突しながら終盤、
宮崎あおいと電車に乗って白無垢の衣装合わせに行きたいといいますが、
これは強く拒絶されます。
拒絶されるどころか、
「今まで頑張らなくていいと言っていたのに急に克服しろと言ってきた。婚約者が出来て私が邪魔になったに違いない、お母さんひどい」
とまで言われる始末。
その後和解するのですが、やはり母の余命をある日知らされたことがきっかけで、
婚約者を家族として受け入れ、自らのトラウマを解消しようと動き始めます。
普通に映画を観る人なら、
“なんだ結局余命宣告されてから、家族としての受け入れが始まっているじゃん”
と思う方もいるはず。
本作の映画レビューの特典がまぁまぁなのはそのせいもあるのかなと。
でもね、これ大きな勘違いと私は思います。
人はその人の“死”を認識したときにはじめて、本当の意味で気づくんです。
その人と過ごす時間が尊く、はかない時間なのだと。
それが安直で、近道しすぎという意見もあってそれも理解できますが、
余命ものが泣ける映画である理由は、余命となった人の時間が(1日でも3ヶ月でも)有限であると明確に認識できるから。
だから愛する人と過ごす時間(シーン)が貴重で、
ともに過ごした人が大切な人と気づき、
自分の過ちやふがいなさを振り返り後悔する。(でも歩き出す)
みたいな。
人は忘れる生き物です。
だから何度でも余命映画が出てくるし、何度観ても泣けるんですね。
少し話が逸れましたが(笑)
個人的には若き桐谷健太が婚約者でやってきたのが新鮮でした。
大竹しのぶと宮崎あおいのラストの白無垢のシーンも良かった。
一時期宮崎あおいが出過ぎてて、泣くシーンや笑うシーン、あらゆるシーンが全部同じに見えた時期があったのですが、改めて観るとやっぱりいいですね。
宮崎あおいはすごく好きで、ユリイカから観てます。
1985年11月30日生まれなんですよ。彼女。
1985年11月3日生まれなんですね、私。
勝手に親近感から多くの作品を観ているはず。
(でも本作は見逃していた・・・)
好きな女優さんの見逃していた作品を観ることも出来て、
とても満足です。
せっきーさん、改めてありがとうございました!
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